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注意書き 2013/06/07(金) 12:29:03.98
ID:DJ+7loo20
※百合、クリユミ、エロ、ねつ造、ネタバレあり
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 01:19:14.94
ID:uskRd4wD0『クリスタ―――』
錆びついた鉄の匂いと、火薬の匂い、それと生臭さの中でわたしは目が覚めた。
今は朝だろうか、昼だろうか、それとも夜だろうか。暗闇の中では時間の経過は分からなかった。
そう言えば、どうして自分はここで寝転がっていたのだろうか。なぜ、みんな同じように転がっているのだろうか。
なぜ、転がっていると理解できるのだろうか。
視界の隅に、窓から差し込む光が過った。光が過った床面は赤黒く染まっているように見えた。
なぜ、この部屋はこんなにも気持ちの悪い匂いで満たされているのか。光はすぐに消えた。やはり、光の中でみんなが転がっているのが見えた。
今更ながらに、怖くなった。わたしは立ち上がろうとして、足が異常に重たいのを感じた。足が動かなければ、戦えない。
戦う?
――――あいつらと、戦う?
そうだ、やらなければ食べられてしまう。クモの糸に絡まれるチョウのように、カマキリに噛り付かれるイモムシのように。
私たちは食べられる側なのだ。だから、いつも周りを見ておかなくてはならない。それが、壁の中だったとしても、やつらは壁を越えてくるのだから。ひと時たりとも安心できるはずなどないのだから。
―――壁よりも大きなあいつらと、戦う?
こんなに不安を抱いていて、今にも張り裂けそうな心臓しか持ち合わせていないのに?
こんな筋肉のついていない身体で?
一人で?
―――君は一人じゃない―――
誰かが、最後に言い残して言ったような気がする。耳元に残ってはいたけれど、すぐに消えてしまうような、そんな砂礫のような印象。
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/30(木) 22:01:28.02
ID:XMMZm2AR0ネタバレあり、ユミクリ、百合、くそ短い、ねつ造
―――雪山で三人とも下山できた日の夜のこと―――
自分以外のやつのことを、私は今まであまり考えなかった。
だって、そうだろう。隣の家が巨人に踏まれたって助けになんていかない。生きる意味も死ぬ意味もそいつの責任で運命。
そもそも、自分以外の枠をせっせと設けている間に、生き残る確率が減ってしまう。
死んだ奴は可愛そうだなとか、そのくらいは思うさ。情け程度にはさ。まあ、悪いのは巨人とかじゃなくて、そいつの運だったってわけ。
中には、自分の操縦席を「はいどうぞ」と明け渡し、自分の人生を誰かが消費するのを待っている、そんな気持ちの悪いやつがいるけれど。
そうさ―――、一度目の人生は舞台にすら立っちゃいなかった。
二度目は違った―――、運命は変えられる。自分も他人も世界も。だから、そいつを見ると妙に気持ちが落ち着かないんだ。
「ユミル……ダズ、なんとか大丈夫そうだって」
気が付くと、クリスタが扉の傍にいた。私は登山用の靴を脱ぎながら、軽く視線を向ける。
「そう、良かったじゃん」
「うん……本当に良かった……ユミルの、ユミルのおかげだわ」
「私じゃなくて、あいつのパンくずみたいな生命力を褒めてやんなよ」
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