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ちなつ「あかりちゃんのことならなんでもお見通しだよ」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:07:48.11 ID:p8Zak/2y0


結衣「じゃあまた放課後」

ちなつ「結衣先輩と放課後まで会えないなんて寂しすぎますぅ!」

あかり「ち、ちなつちゃん、放課後なんてすぐだよぉ」

京子「二人ともちゃんと授業受けろよー」

結衣「それお前の言う台詞じゃないから」

にぎやかな朝。
私とちなつちゃんは、昇降口で京子ちゃんたちと別れて教室へ向かうところだった。

ちなつ「うぅ、結衣せんぱぁい」

あかり「す、すぐ会えるから……」

およよとむせび泣くちなつちゃんはさながら悲劇のヒロインだけど、
早くしないと遅刻してしまうからいつまでも眺めているわけにはいかない。





5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:16:35.64 ID:p8Zak/2y0


特に今日は結衣ちゃんたちのクラスが調理実習で、
最近ごらく部の四人で集まっていた昼休みの時間がなくなってしまったのだ。
だからちなつちゃんが悲しそうにするのはわかるけど……。

ちなつ「はーあ……」

うぅ。
大きな大きな溜息がちなつちゃんの口から漏れた。
それでもなんとか教室まで歩き出してくれたからほっとする。

ちなつ「そういえばあかりちゃん」

あかり「へ?」

良かったと思いながらちなつちゃんの後に続くと、ふとちなつちゃんが私を
振り返って言った。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:21:10.53 ID:p8Zak/2y0


ちなつ「その鞄につけてる新しいキーホルダー」

あかり「あ、これ?」

ちなつ「さてはこの前テレビでやってたの見て買ったでしょ」

正解だった。
この間お姉ちゃんと一緒に見ていた番組で、『クラゲのなもり』というゆるキャラキーホルダーが
流行っていると言っていたから、一目惚れして昨日お姉ちゃんと一緒に買いにいったのだ。

あかり「ちなつちゃん、すごいよぉ!どうしてわかったの!?」

ちなつ「あかりちゃんのことならなんでもお見通しだもん」

私の反応に満足したのか、ちなつちゃんがふふんと笑う。
そういうところもかわいいなあと思いながら、「そっかぁ」と嬉しくなって笑った。



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:25:47.54 ID:p8Zak/2y0


けれど。

ちなつ「あー、私も結衣先輩とお揃いでキーホルダーつけたいなあ。あとお揃いの……」

ちなつちゃんの、いつもの結衣ちゃんトークが始まる。
私はそれを聞きながら、いつものことなのになんだかもやもやとしてくるのを感じていた。

ちなつ「あかりちゃん?」

私がちゃんと聞いていないことがわかったのか、ちなつちゃんが「ちゃんと聞いてよー」と
拗ねた顔をする。
「ご、ごめんね!」と謝りながらも、私の中の何かがいつもと違うみたいで、こっそり首を傾げた。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:29:58.61 ID:p8Zak/2y0




一時間目と二時間目が終わって、三時間目は体育の時間だった。
体育はあまり好きじゃないけど、今日はバレーボールだからちょっと楽しみ。

ちなつ「あかりちゃん、バレー好きなの?」

体操服に着替えながら、ちなつちゃんがあからさまに「似合わない」というような顔をして
聞いてきた。

あかり「うん、好きかなぁ。ちなつちゃんは……」

ちなつ「嫌い」

あかり「……うん、顔にも出てるね」

ちなつ「だって痛いし……」



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:36:35.62 ID:p8Zak/2y0


チャイムの音がしてからも、ちなつちゃんのうんざりしたような愚痴は続いた。
結局最後にそれは結衣ちゃんへのありったけの気持ちを伝えるものに変わったけど。

先生「じゃあ二人一組でボールパスの練習ね」

体育の授業が始まって、私は同じクラスの櫻子ちゃんと組んでパスの練習をすることになった。

櫻子「あかりちゃーん、いっくよー!」

そんな櫻子ちゃんの声にまじって、少し遠くでちなつちゃんと向日葵ちゃんの
はしゃいでいる声が聞こえてきた。
さっきまではバレーが嫌いって言って暗い顔してたのになぁ。



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:43:22.76 ID:p8Zak/2y0


櫻子「あかりちゃーん!」

あ、いけないいけない。
ちなつちゃんたちばかりに気をとられてて櫻子ちゃんのことを忘れてしまっていた。
慌てて前に向き直って――

あかり「へ!?あ、ごめ……へぎゃ!」

ボールが顔面に激突した。

櫻子「あ、あかりちゃんが!?大丈夫ー!?」

涙目になりながらも、かけ寄ってきた櫻子ちゃんに「大丈夫だよぉ」と返す。
そういえばさっきの授業中も先生にあてられて答えられなかったし、なんだか今日は散々。



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:48:35.70 ID:p8Zak/2y0


―――――
 ―――――

そしてお昼休み。
今日の給食は、私が好きなものが二つも入っていた。
これも楽しみにしていたことだったのに、お昼休みまでのことがあったせいか
少し食欲がなかった。

向日葵「赤座さん、あまりお箸が進んでませんわね」

櫻子「ほんとだー。いらないならもらっちゃお」

向日葵「こら櫻子!」

あかり「えへへ、櫻子ちゃん、ひとつあげるよぉ」

櫻子「いいの!?あかりちゃんやっさしー!」



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:52:23.64 ID:p8Zak/2y0


みんなに心配はかけたくないから、普段どおりに振舞う。
ちなつちゃんはそもそもあかりなんかに興味がないのか、もぐもぐとご飯を食べながら
一緒に食べている櫻子ちゃんたちの会話に時々混ざるだけ。

あかり「……」

時折ちなつちゃんのほうを見ると、一度だけ目が合った。
ちなつちゃんは私を数秒間見詰めたあとに首をかしげ、それからなにか言いたげな顔をしたあと
すぐに目を逸らして。



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:58:39.71 ID:p8Zak/2y0


そういえばちなつちゃんと昼休みにはいってからほとんど話していない。
いつもはよく話しかけてくれるちなつちゃんが今日はまったく。

それが朝のことや体育のこととつながって。
もしかして、ちなつちゃんは本当はあかりなんかといるのは楽しくないのかも
しれないと思った。

だって、私と話すときは結衣ちゃんのことばかりだし、今日だって溜め息ばかりついてたし、
体育のときだって向日葵ちゃんととても楽しそうに話していた。

ちなつちゃんは、「あかりちゃんのことならなんでもお見通しだもん」なんて
言っていたけど。
本当は、お友達だと思ってるのはあかりだけなのかな。



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:04:39.91 ID:p8Zak/2y0




五時間目も六時間目も、今日はずっといまいちだった。
あてられることはなかったけど、中々集中できなくてずっと別のことを考えてしまっていた。

それもほとんどが暗いことばかり。
そしてちなつちゃんのこと。

帰りの会を終えて、それでも私はなんとかいつもどおりを繕ってちなつちゃんの
席へ走った。
やっと結衣ちゃんに会えるんだから、嬉しそうなちなつちゃんを早く見たかった。

あかり「ちなつちゃん、部室――」



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:10:03.50 ID:p8Zak/2y0


言いかけたのと、ちなつちゃんがトンッと教科書を揃えて鞄に入れたのは同時だった。
その先を私に言わせまいとしているみたいで、その先を私はなにも言えなかった。

ちなつ「行かないよ」

それから、ゆっくりとちなつちゃんがそう言った。
鞄の口を閉じて、肩に提げながら。

あかり「……へ?ど、どうして?」

ちなつちゃんが行かないと言うなんて思いもしなかった。
それに今日は、昼休みも結衣ちゃんに会えなかったからちなつちゃんなら尚更
行きたがるはずだった。



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:15:34.90 ID:p8Zak/2y0


まさか、結衣ちゃんに会う時間を惜しんでまであかりと一緒にいたくない?
そんな考えが頭をよぎって、泣き出しそうになる。

あかり「ちなつちゃん……」

ちなつ「だってあかりちゃん」

その時、突然額にちなつちゃんの手があてがわれた。
ちなつちゃんの手のあまりの冷たさにびっくりする。

ちなつ「ほら、熱ある」

あかり「えっ……」

ちなつ「風邪引いてるでしょ。今日ずっと様子おかしかったからもしかしてって思ってたけど」



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:24:35.44 ID:p8Zak/2y0


自分でも気付かなかったことだった。
でも確かに、普段より身体が重いことに今さら気付いて。

あ、ほんとだ……。
そう呟くと、ちなつちゃんは呆れたような顔をして「あかりちゃんは危なっかしいんだから」と。

あかり「ご、ごめんねぇ」

ちなつ「ほら帰ろ」

ちなつちゃんが私の手を掴んで言う。
それからふと気付いたように、「一人で帰るとかなしだからね」

あかり「で、でも」

ちなつ「どうせあかりちゃんは私が言わなかったら帰らなかっただろうし、一人で帰ったら途中で犬にでも襲われて倒れてそうだし」

あかり「犬に襲われて!?」

ちなつ「たぶん結衣先輩とお話しててもあかりちゃんのこと気になっちゃうだろうから」



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:33:32.44 ID:p8Zak/2y0


だから帰るの。わかった?
じっと見詰められて、私はこくんこくんと頷いた。

ちなつ「そのかわり、明日もちゃんと学校来てよね。あかりちゃんがいないとつまらないんだから」

結衣先輩の話もできないしいつまでも皮かぶっとかなきゃだし……。
と指折り数えるちなつちゃんを見ながら。
私は良かったと思った。
ちなつちゃんに嫌われたわけでも飽きられたわけでもなくって。

きっと、胸のもやもやも。

あかり「でも、ちなつちゃん本当にすごいね」

ちなつ「当たり前よ」

ほら、晴れていった。
きっとこの重い身体のせいで少し不安になっていただけで。
ちなつちゃんは変わらず、あかりちゃんの大切なお友達でいてくれるのだ。

――あかりちゃんのことならなんでもお見通しだよ。

私のそんな想いすらお見通しみたいに、ちなつちゃんが笑った。

終わり



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:34:58.56 ID:p8Zak/2y0


予想外に短かった
見てくださった方ありがとうございました
それではまた



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:36:11.43 ID:K8YPRzgy0





40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:41:55.67 ID:ybR6fL8V0


おっつりぃん


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:44:47.69 ID:SuXnrDci0


おつおつ
これぐらいの短さも悪くないな



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