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雪歩「足下には細波が」

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:50:00.59 ID:X9jTdM6s0


P「お疲れ、寒い中よく頑張ったな。残りの撮影はまた明日だ」

貴音「お疲れ様です」

雪歩「お疲れ様ですぅ」

P「二人とも大丈夫か? 晴れてるとはいえ、真冬の海で水着なんてやっぱり」

雪歩「いえ、平気です。海には入りませんでしたし、休憩中ストーブで暖は取れましたから」

貴音「それよりも、そろそろ日も中天にかかります。早く旅館に戻って食事と致しましょう」

P「はは、でもその前に二人は露天風呂で温まって来い。唇ちょっと青いぞ」

貴音「むぅ……」

雪歩「空腹は最高のスパイスですよ、四条さん」

P「そういうことだ。さ、戻るぞー」





3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/04(月) 23:56:03.25 ID:X9jTdM6s0


雪歩「四条さん、キレイ……」

貴音「? 雪歩、どうかしましたか?」

雪歩「あの、四条さんは髪のお手入れってどんな風にしてるんですか? 私も髪を伸ばしてみようかと思って」

貴音「特にこれと言った特別なことは……よく食べよく眠る、くらいでしょうか」

雪歩「うう、やっぱり遺伝子レベルで格の差がっ」

貴音「雪歩。雪歩は今のままでも充分魅力的ですよ」

雪歩「でも私、胸も小さいし、四条さんみたいな大人の毛も少ないですし」

貴音「……雪歩、背中を流してもらっても構いませんか?」

雪歩「あ、はい! えっと、こんな感じでどうですか?」

貴音「ええ、大変に気持ちが良いですよ。次はわたくしが雪歩の背中を流しましょう」

雪歩「ふわ、あああありがとうございますっ」



4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:01:26.53 ID:B+ayr75q0


貴音「生き様は背中が語る、と言います」

雪歩「え? あの」

貴音「雪歩の背中は白く、繊細な肌ですね」

雪歩「そ、そんなこと、ないです」

貴音「小さいながらも、他にはない輝きを持っています。外側からは見えない、芯の強さも」

雪歩「……」

貴音「まこと、良き背中です。何一つ恥じるところはないと、あなたの背中は語っていますよ」

雪歩「褒め過ぎ、です……」

貴音「背中だからこそ、自分の良い所が見えないのでしょうね。胸を張りなさい、萩原雪歩。あなたの良さは、わたくしが保証します」

雪歩「……はいっ」



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:07:27.79 ID:B+ayr75q0


雪歩「温かいですねぇ」

貴音「ええ、まことに」

雪歩「なんだか眠っちゃいそうです」

貴音「まだ夜には随分と早いですよ。それに食事もまだです」

雪歩「この後ご飯食べて……ちょっとお昼寝しようかな」

貴音「食べてすぐ寝ると牛になりますよ」

雪歩「四条さんは、牛肉好きですかぁ?」

貴音「……どうやら、相当に眠いようですね。そろそろ上がりましょうか」

雪歩「はい、私も焼肉が一番だと思いますぅ」

貴音「のぼせているのかも知れませんね」



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:09:58.22 ID:B+ayr75q0


雪歩「すぅ……すぅ……」

貴音「雪歩、雪歩。あまり寝ては夜に眠れませんよ。雪歩、雪歩」

雪歩「んん、くぅ……くぅ……」

貴音「面妖な……」

雪歩「しじょ……さ……」

貴音「……」

雪歩「ふふ……すぅ、すぅ……」

貴音「どんな夢を見ているのでしょうか」

雪歩「くぅ……くぅ……」

貴音「……ふふ」



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:14:10.85 ID:B+ayr75q0


雪歩「ん……あれ? 私、何時の間にか寝……?」

貴音「起きましたか?」

雪歩「あ、おはようございます、四条さん」

貴音「まだこんばんは、ですよ。海に沈む夕日が見えませんか?」

雪歩「あ……」

貴音「美しいですね、雪歩」

雪歩「……はい、綺麗ですぅ」

貴音「夕飯までまだいくらか時間があります。少し、散歩でもしませんか?」

雪歩「そうですね、お供します」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:21:25.94 ID:B+ayr75q0


雪歩「あ、もう」

貴音「冬の陽は、あっという間に沈んで行きますね」

雪歩「さっきまであんなに明るかったのに」

貴音「昼と夜の変わり目もまた、乙なものです。寒くはありませんか?」

雪歩「はい、大丈夫です。あ、見てくださいこれ!」

貴音「見事な貝殻……何年もかけてここまで育ったのでしょうね」

雪歩「知ってますか? 巻貝に耳を当てると、波の音が聞こえるんですよ」

貴音「なんと! では、試しに」

雪歩「……聞こえましたか?」

貴音「ええ、雪歩と撮影した今日の海、皆で来た昨年の海。その波の音が、確かに」

雪歩「ふふ、良かったです」



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:35:28.31 ID:B+ayr75q0


雪歩「これって」

貴音「何か、紙切れが入っているように見えますね」

雪歩「ボトルメールかな?」

貴音「ぼと……?」

雪歩「こうやって瓶の中に手紙を入れて海に流す、うーん、遊び? 文化? なんて言うんでしょうか」

貴音「なるほど、そういう風習があるのですね。しかし、海に流してしまっては送り先が定まらないのでは」

雪歩「えっと、これは拾った人が送り先っていうか。と、とにかく中を見てみましょう」

貴音「そういうもの、なのですね。して、文章は?」

雪歩「うーん、日本語でも英語でもないみたいです。読めません」

貴音「読めないのでは返事が書けませんね」

雪歩「えっと、こういうのは普通あんまりお返事は書かなくて……元に戻して流しましょうか」

貴音「そうですね」

雪歩「それじゃあ四条さん、お願いします」

貴音「はい……それっ」

雪歩「今度は読める人の所に着くと良いですね」



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:40:30.77 ID:B+ayr75q0


貴音「あれは……」

雪歩「スコップとバケツ……夏の間に誰かが忘れて行ったんでしょうか?」

貴音「雪歩、何やらそわそわとしているように見えますが」

雪歩「えっと、ちょっとだけお城でも作ってみようかな、なんて……ダメですか?」

貴音「いいえ。わたくしも手伝いましょう」

雪歩「はいっ」

貴音「どうせならば、大きな城を作りたいですね」

雪歩「任せてください!」

貴音「頼もしい返事ですね、ふふ」

雪歩「えへへ」



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:45:12.79 ID:B+ayr75q0


貴音「そろそろ、戻りましょうか」

雪歩「そうですね。一仕事終えた気分です」

貴音「本丸、二の丸、お堀……見事な城です」

雪歩「私と四条さんの二人で作ったお城ですから」

貴音「ふふ、そう言ってもらえると頑張った甲斐があります」

雪歩「もう大分暗くなってきましたね」

貴音「ええ、すぐにも何も見えなくなるでしょう」

雪歩「じゃあ、旅館に」

貴音「ええ、戻りましょう」

雪歩「お風呂、入り直しですね」

貴音「また背中を流してもらってもよいですか?」

雪歩「はい、私の背中もお願いしますね」

貴音「ええ、任せてください」



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 00:55:32.60 ID:B+ayr75q0


雪歩「雪……」

貴音「雪歩、お茶を淹れましたよ。窓辺に何かあるので……おや」

雪歩「降ってきました」

貴音「ふむ、今夜は冷え込みそうですね」

雪歩「海には、雪は積もらないんですね」

貴音「触れれば溶けてしまいますから」

雪歩「……ずず」

貴音「……ずず、ふぅ」

雪歩「綺麗ですね」

貴音「ええ、まことに」

雪歩「……ずず」

貴音「……ずず」

雪歩「綺麗、です」

貴音「ええ」



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 01:07:24.08 ID:B+ayr75q0


雪歩「雪、止んで良かったですね。プロデューサーも撮影止まるかもって心配してましたし」

貴音「これだけ晴れていれば降ることもないでしょう。さあ、今日の撮影も励みましょう」

雪歩「昨日のお城は……あ」

貴音「あの様子、満ち潮にさらわれたようですね」

雪歩「いつかこうなるって分かっていても、なんだか寂しいですね」

貴音「……」

雪歩「あれ? また雪?」

貴音「晴れた空に、雪が……」

P「おーい、二人とも。暫く撮影出来ないからこっちのストーブで休憩しておいてくれー」

雪歩「……四条さん」

貴音「……ええ」

P「おーい、あれ? 聞こえてないのかな、おーい!」

貴音「ふふっ」

雪歩「えへへ」



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 01:18:37.48 ID:B+ayr75q0


小鳥「あら? プロデューサーさん、今度の撮影は夏のイメージっていう話だったんじゃ」

P「ええ、そのはずだったんですけど休憩中の画が監督のツボに入ったみたいで」

小鳥「ああ、それで」

P「ええ、急遽変更になった結果がそれです。でも、良い画ですよね」

小鳥「子供らしさと大人びた雰囲気が妙に入り混ざってて、なんだか不思議ですねぇ」

P「二人の新たな一面が垣間見えた気分ですよ」

小鳥「雪歩ちゃんの大人びた表情も珍しいですけど、貴音ちゃんも滅多に見られない姿ですよね」

P「ええ、あんまり砂遊びのイメージがなくて俺も驚きました」

小鳥「晴れた空、舞い散る雪、寄せては引く波、砂のお城、二人の少女……ロマンティックですねぇ」



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 01:21:19.56 ID:B+ayr75q0


雪歩「四条さん、お茶です」

貴音「ありがとうございます」

雪歩「……ずず」

貴音「……ずず」

雪歩「あのお城も、もうないんでしょうね」

貴音「ええ、波にさらわれたか、風に吹かれたか……」

雪歩「……ずず」

貴音「……ずず」

雪歩「また行きましょうね、海」

貴音「ええ、きっと」


終わり



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/05(火) 01:22:32.88 ID:B+ayr75q0


読了お疲れ様でした
風花、良い曲



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