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千早「春雨腹マイト」

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 03:52:06.32 ID:4uXIc/kz0


彼女が歩く度、揺れるリボン。

「千早ちゃん、傘持ってきてる?」

「ええ、今日は夕方から降るって言ってたし」

彼女が言葉を紡ぐ度、揺れるリボン。

「そっかー、千早ちゃんは傘持ってきてるんだー」

「あの……何?」

彼女が笑う度、揺れるリボン。

「えへへ、実は傘持ってくるの忘れちゃって」

「しょうがないわね、春香は。駅まで一緒に帰りましょう」

自然と手を繋いだ。





3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:01:36.90 ID:4uXIc/kz0


たたっ、たたたっ。

細かな雨粒が傘を叩く。

「千早ちゃん知ってた? 春巻って英語でスプリングロールって言うんだよ」

「ふぅん、なんだかそのまま無理矢理英語にしましたって感じね」

「そうなんだよ! この前のクイズ番組でそういう問題が出て、分からないから直訳で笑いを取りに行ったら正解しちゃって」

「あら、よかったじゃない」

「まさか正解するなんて思ってなかったから素人さんみたいなリアクションしか取れなかったんだよ。ああ、悔しいなぁ」

「……時々、春香は芸人なんじゃないかと思うことがあるわ」

「えっ、私これでも正統派アイドル目指してるんだよ!?」

狭い屋根の下、二人並んで歩く。

言葉は泉のように次から次へと湧いて、溺れてしまいそう。



4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:07:52.60 ID:4uXIc/kz0


「桜もすっかり散っちゃったねー、三月は風強かったからかな? 結局お花見も出来なかったし」

「今年は皆忙しかったもの、仕方ないわ」

「来年は出来るかなぁ」

「出来るといいわね」

溢れる言葉、尽きない話題。

結んだ指の間を風が抜けた。

ぬるい風に自分が溶け出すような、春香が溶け出しているような。

優しい時間だった。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:13:50.80 ID:4uXIc/kz0


遠くの景色に、駅。

……手のひらが汗ばんだ。

「ちょっと、コンビニ寄ろうか」

「ええ」

傘を畳み、ドアを押し開ける。

弁当棚の為か、外よりもいくらか冷えた空気に包まれた。

「アイドルなら雑誌とかチェックしなきゃねー」

「ええ」

二人、並ぶ。

文字を追っても頭には入って来なかった。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:19:31.79 ID:4uXIc/kz0


「あ、これ可愛いよ千早ちゃん!」

指差す先、センスの良い服に身を包んだ少女の写真。

可愛い、というのはよく分からない。

「ええ、そうね」

玄人が言うのだからそうなのだろう。

「こういうのもいいよねー、どう? 可愛くない?」

次々と指差す先には種々のアクセサリー。

可愛い、というのはよく分からない。

「ええ、そうね」

春香が言うのなら間違いないだろう。

「私にも似合うかなー?」

可愛いに決まってる。

「ええ、多分ね」

店内はおでんの熱気か、とても暑かった。



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:28:13.31 ID:4uXIc/kz0


「お腹も減ってきたしそろそろ帰ろっか」

雑誌を手にレジへ並ぶ彼女。

「少し、長居し過ぎたわね」

立ちっぱなしだったからか、足が重い。

外はまだ、雨。

風もなく音もなく、細かな雨粒が降りしきる。

「千早ちゃん、お待たせ」

袖を引かれた。

「ええ。あら、春香?」

食欲をそそる香り。

「えへへ、買っちゃった」

肉まんが割られていた。

「はい、千早ちゃんの分」



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:34:31.69 ID:4uXIc/kz0


軒先に並ぶ。

「美味しいわね」

「うん、美味しいね」

湯気の向こうで雨が降る。

「温かい」

「うん、温まるね」

勢いが強まるでなく、弱まるでなく、しとしとと。

「止みそうにないわね」

「うん、今晩いっぱい降るらしいね」

見下ろす。

水溜りにぶつかっては弾けて、波が揺れる。

揺れては波になって、弾けてぶつかる。

「……温かい」

「うん、温かいね」

ゆっくりと味わった。



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:39:27.73 ID:4uXIc/kz0


「行こっか」

「ええ」

傘を広げて、歩く。

「……」

「……」

信号を待つ間にも、はみ出した肩が濡れていく。

「……」

「……」

隣を横目で盗み見る。

「……」

「……」

雨音がやけにうるさかった。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:47:36.48 ID:4uXIc/kz0


駅の屋根の下、傘を下ろした。

「じゃあ、おやすみ千早ちゃん。気を付けてね」

「おやすみなさい。あのっ」

手のひらが汗ばんだ。

「春香も、気を付けてね」

目の前でリボンが揺れる。

「うん、じゃあバイバイ!」

視界の端でリボンが揺れる。

「……ええ」

駅の中でリボンが揺れる。

「今日も」

何かを言い出そうとして、何かが分からず言えなかった。

「……春香」

どこかでリボンが揺れた。



13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:56:37.04 ID:4uXIc/kz0


駅の屋根の下、道路を見つめていた。

「雨、止みそうにないわね」

湿気を含んだぬるい風。

腹の内で燻る何かが冷めていく。

「あの子、気付くかしら。風邪を引かないといいけれど」

彼女愛用の鞄からはみ出た、折り畳み傘の持ち手。

「……」

天海春香はよく転ぶ。

あれはわざとだ、と言う人もいる。

「まさか」

燻りかけた何かにも春雨は降り注ぐ。

……どこかでリボンが揺れた。

おわり



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 04:59:04.29 ID:/pNRJswz0





15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/21(日) 05:44:53.68 ID:7l+5wbSJ0


乙カレー


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[ 2013/04/21 20:50 ] [ 編集 ]

ふぅ~む、なるほどなるほど
[ 2013/04/21 21:15 ] [ 編集 ]

はるちははなぜこう完成されすぎているのか、もう(手を加える隙が)ないじゃん・・・
[ 2013/04/21 23:51 ] [ 編集 ]

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