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雪歩「萩原さんって呼ばないで」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:44:44.49 ID:CxPqlTsN0


※ガチ百合につき苦手な人はそっ閉じ推奨









「んっ……あっ……!」

透明な喘ぎ声が、暗がりに溶ける。
湿っぽくて、生温かい吐息が私の頬をくすぐる。
体がとろけそうなほど甘い匂いに、くらくらする。

「はぁ……どう、かな……。 うまく出来てる?」
「ふっ……!ぅ……ん……ぅん……!」
壁にもたれかかった千早ちゃんは、何度も何度も、小さく頷く。

……恥ずかしいから電気は消して。
千早ちゃんは、「する」時にはいつもそう言う。

ハダカの千早ちゃんの赤みのかかった熱っぽい顔が、ぼんやりと映る。
「今、すごいエッチな顔してるよ?」
「そこ……だめ……雪、歩っ……!」
そう言って、人差し指をきゅうきゅうと締めつけてくる。
ねばついた液体が垂れ落ちて、床に染みをつくる。……すごい。

……千早ちゃんは、私の部屋にいる時だけ、たまに雪歩って呼んでくれるんです。





3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:47:27.69 ID:CxPqlTsN0


指先で、表面をゆっくりとなぞると……
「んあっ……」
短い喘ぎ声をもらして、千早ちゃんの身体が弓のようにしなった。
汗でぬるぬるしてて、ちょっと冷たい。

月灯りが濡れた窓から差し込んでいて、千早ちゃんのシルエットが浮かぶ。
相変わらず千早ちゃんの体はスレンダーだね。
……なんて言うと千早ちゃんはきっと怒るかな。

桃色の、ぷっくり膨らんだ乳首をこねる。
すると、千早ちゃんがびくんって、大きく跳ねた。
「はっ……もう……っ!」
「ゲンカイ……?」

口の端からこぼれた唾液を、舌ですくいとる。
それを舌の上で転がして、わざと喉を鳴らして呑みこむ。
薄いレモン味……って言うのかな。
千早ちゃんの泣きそうなほどに潤んだ瞳が、とろんと蕩ける。
「あっ……ゆきほっ……」

私も、きっと今すっごいエッチな顔してるんだよね。
すっごく興奮してるのが、自分でもわかった。
もっと千早ちゃんに気持ちよくなって欲しくて……私は何度も、薄いピンク色の唇を吸った。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:49:25.87 ID:CxPqlTsN0


「ふっ……ん……」
お互いの舌先が触れる。
そのまま千早ちゃんの口の中で、舌をくるくると、撫で回す。
ピリピリと痺れるような感覚が気持ちいい。

千早ちゃん、おいしいね。
舌をわざと音を立てて抜いて、耳元でそう呟く。
「恥ず……かしいわ……」
千早ちゃんは目を逸らして、そう言うと、照れ隠しのようにキスをねだる。
私は、マシュマロのようなその唇を、挟みこんで、甘噛んだ。

今の、痛くないかな。大丈夫?

目だけで合図すると、千早ちゃんは瞳をゆっくりと閉じる。
そのまま、私の頬を両手で包んで、引きよせた。
多分、これは了解、のサインだよね。

千早ちゃんとはもう何十回も「した」から、こういうちょっとした事とか、
どこがくすぐったいとか、右の乳首が一番感じるとか、大体わかってきた。

……萩原さんは、その、する時だけは人が変わるのね。

前に、千早ちゃんにそう言われたことがある。
そうなのかな……。私って、もしかして変態、ですか?



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:50:48.55 ID:CxPqlTsN0


「ぅ……ん……!」
「ふっ……うん……」
千早ちゃん……。おいしい。止まらない。

密着した体が、お互いの汗ですべる。
右手で、千早ちゃんの野イチゴのように腫れた乳首を摘まむ。
爪を立てると、こりこりとした弾力が伝わる。
「ふっ……!」
目を強く瞑って、千早ちゃんは快感に耐える。
頬を包む手が小刻みに震えて、もうイっちゃうんだなって、わかった。

うん、いいよ……。

私は、千早ちゃんの中に押し込んだ人差し指を、ぐにゃりと折り曲げて、乱暴に掻き混ぜた。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:52:13.70 ID:CxPqlTsN0


「はっ……あっ……! ダメッ……!」

粘膜をかき出すように、指を動かす。
ぐちゅ、ぐちゅ、とイヤらしい水音が部屋にこだまする。

「ん……あ゛ぁ゛! あぁ……! ゆき……ほぉ……!」
喘ぎ声が一層激しくなる。
涎を垂らして、イヤイヤと、顔を左右に振る千早ちゃんも、普段とは全然違う。

千早ちゃんも、変態なのかな……?

人差し指で、千早ちゃんのはみ出たクリトリスを、くるりと円を描くように撫でた。
その瞬間、千早ちゃんはひと際大きな叫び声をあげる。

「ん……んあぁぁぁぁぁ!」
千早ちゃんのアソコから、シャワーのように愛液が飛び散った。
私の手の平が、水たまりができそうなくらいに、ぐっしょりと濡れる。

「はぁ……はぁ……」
千早ちゃんは口をぽっかり開けて、息を弾ませる。
体が痙攣するたびに、愛液が細い糸になって、したたり落ちた。



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:55:05.04 ID:CxPqlTsN0


……今日も、気持ちよかった?

千早ちゃんは、焦点の定まらない目で、
私を見つめると……。

「……えぇ」
力無く、こくんと小さく頷いた。

……終わった後の、千早ちゃんは、なんだか消えてしまいそうなほど脆くて、
今にも壊れちゃいそうで……

私はそっと、抱きしめる。
どこかに飛んでいかないように。

「でもやっぱり……まだちょっと慣れないわね……」
そう言って目を逸らして微笑む千早ちゃんはどこか寂しそう。
私の胸に一度、そっと触れて、体を離す。
名残惜しそうに、唾液とか、愛液が透明な橋をつくって、ぷつんと途切れる。
乱れた長髪をさっと整えて、薄いパステルカラーの下着をくるぶしに通す。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 00:56:58.67 ID:CxPqlTsN0


私はその光景をぼんやりと眺める。
絹のような、なめらかな背中が、ぬらぬらと光沢を帯びてる。

私の部屋には、深夜に、この湿った匂いがこもる。
お父さんにバレちゃうといけないから、いつも朝までには窓を開けるんだけど……。
この季節は、寒いからちょっと大変かな。

……ここで毎回、エッチする。
千早ちゃんの家ではしたこと無い。
だって、行こうとすると、ちょっとイヤそうな顔するから……。

だから、ここはヒミツを共用してる空間。
ちゃんと鍵はかかってるし、音も漏れない。大丈夫。誰にも邪魔されない。
ここでは、二人っきりの時間が、ゆっくりと流れる。千早ちゃんが電車で帰るまでの間だけ。

だけど……私は千早ちゃんにどれだけ手を伸ばしても……。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:01:15.11 ID:CxPqlTsN0


「……じっとして」
「あ……」
私は背中越しに、そっと手を重ねて……。
ゆっくりと、腰まで千早ちゃんのショーツを引きあげた。

「あ、ありがとう。 えっと、ゆ、雪歩……」
情事の熱が冷めきった千早ちゃんは、恥ずかしそうに言う。

……お礼するのってちょっと変じゃないかな。
でも、千早ちゃんらしいね。

……。

あれ……?おかしいな。
握った手が、離れないや。
不意に、私の口から、無意識に言葉が飛び出した。

「ごめんね……」
「……どうして謝るの……? 雪歩」
「わからない、なんとなくかな」
「……」

いつのまにか、外には雨が降り出していて……。
少しだけ開けた窓からは、雨がアスファルトを叩く音と、じめじめした匂いを運んだ。
この匂いは、「した」あとの匂いによく似てる。

……私と千早ちゃんは恋人じゃない。



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:03:12.67 ID:CxPqlTsN0


……。

窓を閉めると、雨音がぴたりと止む。
「やっぱり今日も、帰るんだ」
「……えぇ。ごめんなさい」
「謝らなくていいよ」

千早ちゃんは、いつのまにか、いつものタートルネックと白のブラウスに着替えていた。
私は、タンスに畳んだ白いパジャマを取り出す。下着姿のままで灯りを点けるのは、まだちょっと恥ずかしい。

暗闇に、ライトグリーンが仄かに光る。千早ちゃんの携帯電話の液晶画面の光だった。
千早ちゃんは、そのまま動かない。

私は気になって、それを横目でちらりと眺める。
パジャマの袖を通す手が、思わず止まった。
そのまま、しん……と静寂が流れる。

……やっぱり、なんだね。



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:06:01.51 ID:CxPqlTsN0


私は、震える声で言った。なるべく悟られないように、声を押し殺して。
「終電まであと少し、だね」
「えぇ……」

ねぇ、千早ちゃん。心の中で思った。
……私は、千早ちゃんがどうしようもなく好きです。
普段のクールな、歌姫の千早ちゃんにも憧れてます。
二人っきりの時に見せる、切なそうに喘ぐ千早ちゃんも可愛い。
時々見せてくれる、影のあるその表情も、そっと優しく包み込んであげたい。

だけど……。

携帯の待ち受け画面に映る、その笑顔が、私の胸を締めつける。
わかっててもやっぱり、苦しいよ。

私たちは数え切れないほど体を重ねても……。
その間には、ずっとずっと、煙のようにこの笑顔が浮かんで、まとわりつく。

だけど……そう、千早ちゃんは、春香ちゃんが好き。



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:07:30.82 ID:CxPqlTsN0


……。

湯気が立ちこめるホットコーヒーに、オレンジ色の蛍光灯の明りが、ゆらゆらと揺れる。
目の前の千早ちゃんは、両手でカップを包みこんで、ぼんやりそれを眺めてる。
「ねぇ、今日はお砂糖いくつ?」
「あっ……」

私がそう聞くと、千早ちゃんは眠りから覚めたみたいに、頭を上げる。
濡れた瞳でじっと見つめてくる。濃いブラウンのかかった瞳に、なんだか吸い込まれそう。
しばらくすると、かすかに口角をあげて言った。
「そうね、今日はブラックコーヒーにしようかしら」
「う、うん。わかった」

千早ちゃんは、不思議なことに毎回コーヒーの味を変える。
一昨日はミルクを半分くらい入れたし、昨日はお砂糖をたっぷり入れた。

どうして?って聞いても、
なんとなく、とか、今日はそういう気分なの、としか答えない。
千早ちゃんは無表情でカップを口に運ぶ。私はそれを真似して、とっても苦いコーヒーを啜る。
……うぅ、千早ちゃんって大人です。

ここではゆっくりと、時間が流れる。あの窓の表面を滴っていく雨水みたいって思った。

だけど、終電の時間は、それでもやっぱり近付いてきちゃう。
私は、俯きながら千早ちゃんに言った。カップを握る手に力がこもった。

「……ね、ねぇ、今日は雨が降ってるよ。泊まっていったほうがいいよ」



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:09:23.41 ID:CxPqlTsN0


「えっ」
「たまには、一度くらいは、ね?」
千早ちゃんは、目を見開いて固まる。
それきり、水を打ったように静まり返る。
こくり、と喉がひとつ鳴った。今の千早ちゃんに聞こえてないかな……。

ざぁざぁと、雨が地面をノックする音だけが部屋に響く。

そして……

「……ダメ」
千早ちゃんはぽつりと一言だけ呟いた。
そのままカップを見つめて、千早ちゃんは一言一言ことばを紡ぐ。

ごめんなさい、決してイヤなわけじゃないの。
けれどもう、私は萩、雪歩に甘えられないから。
だから……。

不意に、千早ちゃんがテーブルから身を乗り出した。
私の顎を、細い指先で持ち上げて……。
目を瞑った千早ちゃんの、端正な顔立ちが近付いていって……。

柔らかくて、生温かい唇が触れた。
……ほろ苦い。あ、コーヒーの味だ。

そして、すぐに離れる。私は、もっと味わいたいのに。
頬を撫でる手の平がくすぐったい。
微笑みながら千早ちゃんは囁くように言った。
「だから今日のところは、さよなら、ね」



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:11:24.03 ID:CxPqlTsN0


……。

私のお家の庭には、雨の日には蛙が鳴く。
千早ちゃんは玄関で、折りたたみ傘を鞄から取り出して言った。
吐息が煙のように夜空に昇って、ふっと消える。
「それじゃまた事務所で、雪歩」
「う、うん……またね……」

千早ちゃんの背中が、どんどんと小さくなっていく。
日付が変わる頃の、いつもの光景。
だけど、やっぱり胸の奥がちくちくと痛むんです

……千早ちゃんは、春香ちゃんが好き。
それを知った上で、私から始めた関係。

「……」
千早ちゃんが去った後の私の部屋には、私達が「した」後の残り香だけが漂う。

……。

──おはよう、萩原さん。

そして、朝には、私たちは何食わぬ顔で挨拶をする。



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:13:46.51 ID:CxPqlTsN0


「う、うん。おはよう。千早ちゃん」
「今日もレッスン、頑張りましょう?」
千早ちゃんは真剣な顔つきで私にそう言う。

「いいかしら? 萩原さん。 もうすぐライブが近いわ、気合いを入れましょう」
長い青みのかかった髪をかきあげて、譜面を手に取って眺める。

──ふっあぁ……!

昨日の夜の、顔をくしゃくしゃに歪ませて喘ぐ千早ちゃんが頭をよぎる。

──あっ……そこっ……雪歩ぉ……!

歯を食いしばって、頬を真っ赤にして、口の端から唾液を垂らす千早ちゃん。
私だけに見せてくれる千早ちゃんの痴態。あの時とは別人みたい。

なんだか全部、ウソみたい、です。



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:15:31.10 ID:CxPqlTsN0


私たちは、普通の人とは違う恋をしているから。
それを解った上で、でたらめで、あやふやな関係を続けてる。

千早ちゃんは、春香ちゃんが好き。
だけど、春香ちゃんの好きは千早ちゃんの好きじゃない。
気づいたのは多分、私だけ。それを利用したんです。

──そうなんだ、千早ちゃんも女の子が好きなんだね。
──私も、どうしても届かない人がいるんだ。一緒だね。

そう伝えた千早ちゃんは、嬉しさと悲しさが入り混じった複雑な表情を浮かべた。

──イヤになったら、いつでもやめていいから。
──ううん。全部、私のせいにしていいよ。
──いつかその人が振り向いてくれるまでの間だけ……。

千早ちゃんは、胸をきゅっと握りしめて、無言で、小さく頷いた。

……やっぱりズルい、ですか。



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:17:00.17 ID:CxPqlTsN0


……。

「おつかれさま、萩原さん、それじゃまた明日」
千早ちゃんは、汗を額ににじませてそう言った。
こぼれおちる雫が、窓からさしこむ陽だまりに反射して、キレイに輝く。
私は、精一杯の笑顔をつくって、手を胸の前で振る。

「う、うん。また明日」
他の765プロの皆にも、同じ挨拶をして、階段を駆け降りる。
……途中、足がもつれて転びそうになっちゃいました。

ドジだよね、私ってやっぱり。ドジで……ひんそーでちんちくりん。
それに、ズルい。

私は、携帯電話を取り出して、凍える指でメールを打った。
[今日も来るんだよね。部屋を暖かくして待ってます]

……。

先の無い恋なのは、わかってます。
だけど、風船のように、どんどん私の想いは膨らんでいっちゃって……。
もう弾けちゃいそうで、「好き」って言おうとすると……。
途端に萎んでいって、どうしても気持ちを伝えられなくて。
もう止めようって思っても、また何かのきっかけで、息ができないほど胸が苦しくなって……。

千早ちゃん、おかえりなさい。

……こんばんは、萩原さん。

私の部屋は毎晩、千早ちゃんの喘ぎ声と湿った匂いで満ちる。



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:18:20.29 ID:CxPqlTsN0


……。

照明の落ちた部屋。
まだ目が慣れてないから、ベッドに寝転がる千早ちゃんがどんな表情を浮かべているかわからない
「んん……」

軽く触れるだけのキス。
千早ちゃんの唇はまだ、ひんやりと冷たかった。
押し込むと唇がぐにゃりと形を変える。左右に、ゆっくりと擦って感触を楽しんでみる。
……冬のせいかな。
千早ちゃんの唇は、乾燥して、ささくれ立ってて、かさかさする。
私は、リップクリームを塗るかのように、ちろちろと舌で舐める。
そのまま、舌全体で唾液を激しく塗りたくる。
「ふっん……」
そしたらすぐに、千早ちゃんの吐息が漏れだした。

……可愛い。

背筋がゾクゾクする。歯の奥がムズムズする。
千早ちゃん可愛い。私にだけ、その蕩けた顔を見せて。
他の誰にも、見せないで……。そう思った瞬間、体が強張って……。

「っつ……」
千早ちゃんの苦しそうな声が漏れた。歯が当たっちゃったみたい。
「あっごめんね……」
「大丈夫、もっとしてほしい……雪歩……」

私は、さっきの想いをかき消すように、千早ちゃんの顔にキスの雨を降らす。



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:21:05.93 ID:CxPqlTsN0


真っ暗な部屋には、私の唇を吸う音だけがこだまする。
頬やオデコへのキスは唇とは違った感触と味がする。

「……ん」
千早ちゃんは、それだけじゃ物足りないみたい。
私の背中に回した手に力がこもって、強く引き寄せられた。

勢いで、枕に顔が埋もれる。
「ゆきほ……もっと……」
耳元で、千早ちゃんの吐息混じりの声が聞こえた。
私の思考が、ピンクのもやがかかったみたいに鈍くなる。

千早ちゃん……千早ちゃん……。

暗闇に慣れた視界の目の前には、さらさらのシルクのような肌。

……もっと?

「くひっ……!」
首筋を、ねぶるように舐めた。千早ちゃんの体が小さく跳ねる。
ちょっとしょっぱい。唾液の透明なラインが首に引かれる。
舌を、そのラインに沿って這わせるたびに、千早ちゃんの指が私の背中をひっかいた。
「はっ……あっ…ぁっ…!」
「やっぱり、ここ、敏感なんだね」
「やぁ……そんなことっ……!」

千早ちゃんの肢体は、まるでグリスを塗ったみたいに汗でぬめる。



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:23:41.66 ID:CxPqlTsN0


どうしよ……いつもよりすごく興奮してる……。

私たちの行為は日に日にエスカレートしていった。
……前はキスをちょっとするだけで満足でした。
だけど、する度にどんどん好きになっていっちゃって……。
それ以上にどんどん寂しくなって……。
拭いきれない気持ちを、全部エッチに込めていったらこうなっちゃってて……。

「んっ……はぁ……!」

もう、この時は春香ちゃんの事とか、先のこととか全部どうでもよくなっちゃって……。

私は、首に埋めた唇を、強く吸いあげた。
じゅるっ……とねばついた液体が啜られる音が響く。

……千早ちゃん、キスマーク付けていいよね。

「やっ……!」
その瞬間、千早ちゃんがひと際大きな声をあげる。

「ゆきほ、まっ……!」
もう、止まらないよ。

千早ちゃ──

そのとき、不意に、私の胸元に強い衝撃が走った。



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:26:39.16 ID:CxPqlTsN0


気づいたら、私はベッドから転げ落ちてて……。
「けほっ……」
とにかく、苦しかった。息が出来ない。
「けほっ……うぅ……」

……一体、何が起こったのか、すぐには理解できませんでした。
それで、呼吸が整った後に、顔をあげたら……

「はぁ……はぁ……」
ぼやけた視界に、千早ちゃんの、息を切らした、泣きそうな顔が見えて……

そこで、千早ちゃんが拒絶したんだってやっと気づいた。
頭が真っ白になる。さっきの熱が一気に、体の奥に引っ込んでく。

ごめんね……。

……こういう些細なことで、ゆるやかに、音もなく、だけど確実に、私たちはズレていく。



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:30:03.02 ID:CxPqlTsN0


……。

カチッカチッ、と目覚まし時計の針が鳴る。
名残惜しそうに、その無機質な音が耳にまとわりつく。離れない。

……終電まで、あと数十分。
ゆっくり、ゆっくりと近付いていく。

「……」
千早ちゃんの、なだらかで真っ白な背中が見える。
……やっぱりキレイ、触りたい。
あの肌に指をそっと這わせると、ぴくんって跳ねて、震えるんだよね。
可愛い。抱きしめたい。



36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:34:48.38 ID:CxPqlTsN0


あっ……。

千早ちゃんは肌を覆い隠すように、ブラウスを羽織る。
ボタンを1つずつ、丁寧に止めていく。

「……」
私は、ぼんやりとそれを眺める。
ゆらゆらと、淡い影が白い壁に揺れる。

ぽつりと、小さな声が聞こえた。
「ごめんなさい……突飛ばしたりなんかして」
「こっちこそごめんね」
「なんだか……」
「えっ……」
「なんだか私たちって、謝ってばかりいるわね」

プチンって、最後のボタンを止める音が小さく鳴った。
千早ちゃんは、濡れた窓ガラスの前に立つと、顔をちょっと傾ける。
首筋にそっと手をふれる。
そして、かすかに顔をしかめる。
……赤黒く滲んだ、痛々しく残るキスの跡をさすりながら。

私たちは、今にも破裂しちゃいそうな心を抱えながら、
お互いを慰め合って、お互いを傷つけあう。

……私と千早ちゃんは恋人じゃない。

千早ちゃん、あなたはこの関係を何て呼びますか?



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:38:42.96 ID:CxPqlTsN0


それじゃ、今日のところは、さようなら。

そう言って、千早ちゃんはドアノブに手をかける。
携帯電話で時間を確認して……。
小さくため息をついたのに、気づいてしまった。

う、うん。それじゃまたね、千早ちゃん。

……。あれ……?

おかしいな、声が出ない。
喉の奥で言葉が絡まって、ひりつく。

今日は千早ちゃんにヒドイことしちゃったのに。
ワガママ言っちゃダメなのに。

勝手に足が動きだしちゃって……。
ダメって思っても、もう止まらなくて。
「……雪歩?」

……気づいたら、私は、千早ちゃんの服の裾をキツく握りしめていました。

「お願い、千早ちゃん。泊まっていって……」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:44:41.27 ID:CxPqlTsN0


……。

「あっ……」
テレビ画面は、いつのまにか砂嵐になっていた。
土砂降りの雨そっくりな音が、部屋に響く。

さっきまで、とっても楽しそうなコメディ番組がやってたはずなんだけど……。

と、止めなきゃ……。
私は、慌ててスイッチを切る。

……そしてまた、静かになる。



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:47:18.20 ID:CxPqlTsN0


私たちは、終電の時間が過ぎた後、取り留めの無い会話をただ続けた。
お仕事のこととか、最近読んだ本のこととか……。
ただ、上辺だけをなぞる会話。刺激しないように、慎重にって。

そしたら突然、千早ちゃんが両手で顔を覆って、震えだしちゃって。
私はどうしたらいいのかわからなくて。
それっきり会話が途切れて……。

「……」
千早ちゃんは、部屋の片隅で丸まって膝に顔をうずめてる。
ただ、ずっとそうしてる。

……今、どんな表情をしてるの?
見せて欲しい。だけど、怖い。

「ね、ねぇコーヒー飲む?」
私は、なるべく平坦な口調を保って言う。
「……」
きゅっ、と千早ちゃんは体をさらに縮こませて、言った。

雪歩の……雪歩の煎れたお茶が飲んでみたい



42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:50:22.42 ID:CxPqlTsN0


……。

「千早ちゃん、出来たよ……」
テーブルの前に、湯のみを2つ置く。
私の動悸は「してる」時よりも、どんどん激しくなっていく。

あ、あれ、何だろう……。何で私は、こんなにドキドキしてるんだろ……。

「千早ちゃん……?」
千早ちゃんは、ゆっくりと顔をあげる。

……あ。

その時の千早ちゃんの表情は、真剣そのものだった。
口をまっすぐ結んで、じっと正面を見つめて。

765プロでは、珍しくもなんともない、いつもの千早ちゃんの表情。
だけど、この部屋で見るのは初めてだった。

「ありがとう、雪歩……」
千早ちゃんは湯のみを、両手で包む。
そして、口へゆっくりと運ぶ。

……こくり、と喉が鳴った。



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:52:51.93 ID:CxPqlTsN0


「あたたかい……」
そう言うと、千早ちゃんはにっこりと微笑んで……
唇が、小刻みに震えて……

えっ……。

瞳から、大粒の涙がこぼれた。

ねぇ……雪歩……。

この部屋では二人だけの時間が流れる。ゆっくりと、心地よい空間。
霧雨みたいに、私たちを優しく包み込んで、目の前をぼやかす。

震える声で、千早ちゃんは続けた。
私は、千早ちゃんの言葉に精一杯ついていく。

雪歩の好きな人は、振り向いてくれた?

……ううん、近付こうとすればするほど、離れていっちゃうんだ

……私たちって、少し似てるかも知れないわね。

そ、そんなこんな私なんて……千早ちゃんなんかと……。

……ねぇ、雪歩、私は春香が好き。

……うん、知ってるよ。



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:56:03.13 ID:CxPqlTsN0


雪歩と、その、セックスしてる時でも、春香のことを考えてしまうの。

……そうなんだ。

……ヒドイって思う?

ううん、知ってた。

雪歩のことは……。

……。

自分でも、よくわからないの。雪歩への感情が、何なのか。
綺麗事では割り切れない何かがあって……。

……。

ここにいると、全てがどうでもいい気分になって。
歌のことも、春香のことも。ただ、気持ちよくて……。
でも電車に乗る頃には、ひどく悲しくなって……。


……うん。

……もう、おしまいにしましょう。

……。



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 01:59:20.76 ID:CxPqlTsN0


……私は、もう耐えられないの。

……。

ひたすら、弱くなっていく自分に。
それになにより、弱くなっていく雪歩を見るのが、もう耐えられない。

……そっか、ついに来ちゃったんだね。

全部、私のせいね。あの時、頷いたせい。

違うよ、私が全部悪いんだよ、ごめんね。

……ごめんなさい。

それじゃ最後に、キスしていいかな? 大丈夫、触れるだけだよ。

……雪歩。



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:02:05.59 ID:CxPqlTsN0


……。

眩しい。
かすかに開いた窓から光がさしこんで、私の顔を照らす。
朝露が、窓に張り付いてる。湿った匂いが鼻をついた。

……そろそろお父さんが来るから、開けなきゃ。
鉛のように重い体を持ち上げて、そっと、冷たいガラスに触れる。

「終わっちゃったんだね……」

最初からわかってました。いつかこの日が来るって。
わかってたんです。

こんな綱渡りみたいな関係が、いつまでも続くハズない。

……本当にわかってたのかな。
ううん、私、千早ちゃんが心変わりしてくれるんじゃないかって、どこかで期待してた。



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:05:41.61 ID:CxPqlTsN0


倒れ込むように窓を押し開けると、温かい光が部屋の隅まで届く。
今日は晴れ、だね。湿った匂いが、外へ逃げていく。

……私は、誰もいない部屋を、ゆっくり見渡しました。
昨日の名残は、2つの乾いた湯のみ。他には……。

「あ……」

……。

私、何で今まで気づかなかったんだろ……。

何も無かったんだ。あれだけ、毎晩エッチしてたのに、
この部屋には千早ちゃんが残した何も無い。

終電で必ず帰るのも、コーヒーの味を毎回変えるのも、
折りたたみ傘とか歯ブラシを持ち歩くのも、「ただいま」って言ってくれないのも……。

この部屋に、何も置いていかないためだったんだね。

だけど……。

「……ぅっ……」

……千早ちゃん、体の芯に残る、この仄かな温もりだけが忘れられません。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:12:24.74 ID:CxPqlTsN0


……それから。

千早ちゃんは部屋に来なくなって、メールも途切れていって、
お仕事も忙しくなって、事務所でも会えなくなって……。

そしてある日、千早ちゃんと、街の喧騒のなか偶然、出会いました。

──萩原さん、久しぶりね。

千早ちゃん、ありがとう。

──ごめんなさい、私は、ダメなの。
萩原さんみたいに、いざという時に強くなれない。

千早ちゃんのおかげで、私は、早めにあの日々を忘れることができそうです。

──ああしないと、私はきっと萩原さんに甘えてしまってたから。

だから、お願いだから……この熱が、完全に冷めきる間だけは……

「萩原さん……?」

萩原さんって呼ばないで……!



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:13:12.16 ID:CxPqlTsN0




ちはゆき おわり



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:13:38.69 ID:tn9If+rY0


乙であった


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:18:46.61 ID:CxPqlTsN0


たまにはこういう上手くいかない話もいいよね!もう書かん!
趣味丸出しでした

閉店満足。おつかれさまでした。
みきまこが一番好きです!



64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:19:48.50 ID:Rn3aqw+h0


趣味丸出しでいいじゃない。SSだもの



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:21:54.86 ID:CxPqlTsN0


読んでくれた方、支援してくれた方、本当にありがとうございました。

ああああずたかも書きたいなああ
オヤスミー(^o^)ノ



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:22:46.44 ID:tn9If+rY0


良かったよ
…さて俺も寝るか



68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 02:23:48.92 ID:AuQ+aof/0


切ないなあ
なんにしても乙!
あずたかも見たいな



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濃厚ないちゃラブも良いが、報われない三角関係てのは切なくてイイネ!
[ 2012/06/16 07:05 ] [ 編集 ]

この雰囲気大好き
また書いてほしい
[ 2012/08/30 18:00 ] [ 編集 ]

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