1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 20:32:00.86
ID:UP4QXci20
目を覚ましてから、数日が経った。
”目を覚ましてから”というのは、別に”朝起きたら”という程度のものではない。目を覚ましてからの前には”逆に暗殺されそうになって”という一文が付く。
とにかく、腹立たしくも自分が情けないが。結果としてこうなってしまった以上、考えるのはこれからの事だ。
暗い思考を切り替えて、未来について考えよう。
そう、今回の件は全て忘れ……
『しえなちゃーん! お見舞いにきたよ~っ!!』
病室のドアを無遠慮に開け、当然のように乗り込んできたのは……今まさに記憶から抹消しようと思っていたモノの、一つだった。
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 20:50:27.76
ID:fJ/TUA1k0 乙哉「やっほーしえなちゃん。元気してた?」ニコ
しえな「……」
しえな「どうしてお前がここにいるんだ」
乙哉「走りから連絡あってさ~『剣持さんが善戦の末、敗北したっス。なので励ましてやってください』ってね♪」チョキチョキ
しえな「あの女……」ハァ
しえな「あと、そのハサミはなんだ? 早くしまえ 」
乙哉「『励ましてやって』なんて言われたら、あたしとしてはとりあえずカットでしょっ」アハ
しえな「……」
しえな「ボクは病人なんだ。見舞いはいいから帰ってくれ。そして二度と来るな」シッシ
乙哉「あ~、激闘の末倒れたんだから疲れてて当たり前だよねー。わかるよ、うんうん」
しえな「……」 3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 20:54:14.25
ID:FE3cACOP0 乙哉「で、どうだった? 東。強かったっしょ」ニコッ
しえな「……」
しえな「……ま、まあまあだったな」 5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 21:03:32.12
ID:UP4QXci20 乙哉「おー、あたしもそこそこやったつもりだけど。しえなちゃんはどう闘った?」
乙哉「ハサミのみでヤったあたしと違って、しえなちゃんなら色々考えたんでしょー??」
しえな「っ」
しえな「そ、そうだっ」
しえな「ボクは、演劇をやることになった黒組で演出を引き受け……それぞれの癖や特徴など情報を集めに集めた…っ!」
乙哉「さっすが。賢いなあ、しえなちゃんは」アハッ
乙哉「……それで、どう”善戦”したの?」
しえな「っ……」 6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 21:18:57.89
ID:G0ttFOJd0 しえな「そ、それはだな……」
乙哉「アイツってさ、格闘だけじゃなくナイフの扱いも上手くなかった? 本当、噂通りの実力だったよね~」
しえな「そ、そうだな」
しえな「……あのナイフはヤバかった。卑怯だよ本当」ウンウン 7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 21:23:14.90
ID:ahY0O59U0 乙哉「本当、切り傷中々癒えないんだよねえ」
乙哉「ん?」
乙哉「……しえなちゃん」
乙哉「パッと見、無傷に見えるんだけど気のせいかな」
しえな「!」 8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 21:27:24.00
ID:Dw4c5BN20 しえな「あっと、えと……」
しえな「……アイツ、ナイフ投げてこなかった? 暗闇だったから、ボクを狙いにくかったんだろうな。幸い当たらずに済んだ」
乙哉「へえ……」
しえな「……」
乙哉「そうなんだ。それはラッキーだったね!」ニコッ
しえな「あ、ああ……」ズキ 9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 21:35:31.35
ID:Ysvr1PnO0 乙哉「それならさー…」
乙哉「最後は何でヤられたの? あたしの場合は晴ちゃんに邪魔されてさー」プンプン
しえな「……そ、そうソレ。一ノ瀬」
しえな「ボクもアイツに邪魔さえされなきゃ… 看護士「はい剣持さん、容態はどうですか~」
しえな「……」
看護士「少し前まで毒が効いていたんですから安静にしていてくださいねー」
乙哉「……」
……
看護士「それじゃあ、お大事に」ペコッ
ガチャンッ
乙哉「……”毒”?」
乙哉「えっ、晴っち ”毒”使ってきたのっ!?」
しえな「~~」ダラダラ 11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 21:44:16.18
ID:MJ6dux8o0 乙哉「”白兵戦最強”に”毒使い”って」
乙哉「裏の世界でも通用するコンビじゃん。手強すぎでしょ!」
しえな「……」サアァ
しえな「あ、あのな……? 武智…」
乙哉「でも……」
乙哉「その二人とやり合って奥の手まで出させたしえなちゃんって、本当にスゴイとあたしは思うよっ!」パアァッ
乙哉「やるだけやってダメだったんだから、もうこの内容に胸を張っていこうよ! ねっ?」ニコ
しえな「……」
しえな「あ、ああ……あの毒は…強烈だったな(本当)」 12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 22:00:12.55
ID:Dw4c5BN20 乙哉「へぇ~、まああたしの時は麻酔効果のある花を使ってきたなぁ」
しえな「”毒使い”?」
乙哉「うん、”毒使い”」
しえな「でも……桐ヶ谷のやつ、覚えてろよ」
乙哉「ん? 晴っちの話でしょ??」
しえな「えっ」
乙哉「えっ」 13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 22:07:54.71
ID:Ysvr1PnO0 乙哉「柩ちゃんがなんか関係あるの?」
しえな「そ、それは……」
乙哉「もしかして、毒と関係ある……とか?」
しえな「っ」
乙哉「そしてしえなちゃんはほとんど戦闘してないとか?」
しえな「……武智?」
乙哉「そもそも戦闘どころか予告票見せる前にヤられちゃったとか??」
しえな「お前……知ってたな!?」
ガタッ
乙哉「やだなーそんな怒んないでよ~」アッハッハ
しえな「おい! 待てこら!!」カアァ 14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 22:18:21.94
ID:G0ttFOJd0 ……
ハァ、ハァ…
乙哉「いやー、からかい甲斐があるなぁしえなちゃんは」アハハ…
しえな「くそっ、体調が万全だったら……」
しえな「……そもそも、知っててどうして来た? 嫌がらせか??」フン
乙哉「やー……違うよ」
乙哉「……しえなちゃん、落ち込んでるだろうなと思ってさ」
しえな「……っ」
乙哉「ほら、言ったじゃん? はじめに」
乙哉「……”カットしにきた”って」
乙哉「しえなちゃんの事だから、忘れようとして胸の奥に仕舞い続けるんだろーなーって、考えてさ」
乙哉「その暗い気持ち、カットしてやろうと思って」ニコッ
しえな「……武智」
乙哉「スッキリした? ……あたしは、しえなちゃんの事が大好きだから」ヘヘ
しえな「……ま、まあ…」
しえな「…………ちょっとだけ、な」ポリ 15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 22:44:15.92
ID:ahY0O59U0 しえな「……ここだけの話、な」
乙哉「?」
しえな「武智が寮部屋の中でチョキチョキやって、家具とかに少し痕が残ったりしていたんだが…」
しえな「……お前がいなくなってからも、その切り痕を見てボンヤリしていてさ」
しえな「いま思えば寂しかったんだろうな……」
しえな「だから、こうして再びお前と会えて……ボクは嬉しいよ」ニコッ
乙哉「っ」ボッ
しえな「? どうかしたか??」
乙哉「い、いや……なんでもないよ」カアァ
しえな「大丈夫か? 幸い、ここは病院だから…」
乙哉「だから大丈夫だって! それ以上近づくとバラすからっ」
しえな「たく、わからんやつだな……」ハァ
確かに、ボクは恥ずべき退場の仕方をした。
それは武智の言う通り、吐き出さなければ胸の奥にずっと引っかかっていたものだろう。
乙哉「ちょっとタンマっ、なんかダメなんだって。顔がちーかーいーっ!」カァ
しえな「むう、これではまるでボクがいじめをしているみたいじゃないか」プン
あの学園生活で、何かを成す事は出来なかったかもしれない……。
しかし、得たものはあったようだ。
……室内に咲く2つの笑顔が、その証明なのだろう。
<了> 16 :
◆pLbueKi5z8zQ 2014/05/09(金) 22:48:20.75
ID:MJ6dux8o0 しえなちゃんと武智さんは、目線が違っても同じ道を歩けるはずだと思っています。
乙です。
- 関連記事
-
不憫なしえなちゃん等いなかった!
もっと乙しえ増えて欲しい
怒涛の悪魔のリドルSS更新いいぞ。
まとめられてない奴もあるよ
コメントの投稿