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ことり「ONE WAY」

1 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 16:09:06.29 ID:sEGO+TIk.net


仲良さそうに街を行き交う、おじいちゃんとおばあちゃん、夫婦っぽい人たちとか、高校生くらいのグループとか。

あとは、カップルとか。

そういう人たちを見ても、少し前までは平気だったはずなのに。

もしも、海未ちゃんと出会うのが、もうホンの少しだけ早かったら……

今ごろは、違う未来があったのかな。

今ごろは、海未ちゃんの隣で手を繋いで歩いているのは、私だったんじゃないかなぁ……

はぁ。

ため息を地面に落とし、仲良さそうに前を歩く二人を追いかける。


『穂乃果ちゃんと海未ちゃんが付き合い始めたらしい――』


そんな噂を聞いたのが、つい先週のこと。

でも私は、それよりも前に知っていた。

っていうよりも、分かっちゃった。

だって二人とは、毎朝一緒に登校してるんだもん。

付き合い始めた翌日には、もう知って……じゃなくて、分かっちゃった。





3 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 16:16:48.98 ID:sEGO+TIk.net


いつまでも下向いてたら、怪しまれるよね?

重たい首を持ち上げ、前を向くと、

前の二人は、何やらコソコソと耳打ちしている。

きっと二人ともそういうつもりはないんだろうけど、

私には、仲のいいところを見せつけるかのように見えちゃった。

二人は、お腹の中からの幼馴染だもんね。

私なんかよりも、よっぽど長いあいだ一緒にいるんだもんね。

また俯いて、唇を噛み締める。

穂乃果「それじゃあ海未ちゃん、ファイトだよっ!」

海未「ええ。それではまた明日」

穂乃果「メールとかラインとか電話とかするねー!」

海未「どれか一つにしてくださいっ!」

穂乃果「あはは、まったねー!」

……あれ?

どうしたんだろう。穂乃果ちゃん、用事かな?



4 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 16:28:23.39 ID:sEGO+TIk.net


ことり「ねぇ海未ちゃん。穂乃果ちゃん、どうかしたの?」

海未「ええと、ですね……その、なんと言ったらいいのやら……」

ことり「んー?」

海未「あ!穂乃果はなんか用事が出来たみたいですよ!」

ことり「…………?」

嘘だってことが、丸分かりです。

昔っから嘘を吐くこととか、隠し事ができない素直な性格。

無数にある、海未ちゃんのことが好きな理由の一つです。

ことり「うーんと、それ、本当?」

海未「な、なんで……いや、嘘じゃないですよ!?」

ことり「それじゃ、穂乃果ちゃんはどんな用事だったの?」

海未「あの、えと」

ことり「嘘、なんだよね?」

海未「う……はぁ」

海未「素直に話をするので、ちょっとだけ、距離取ってもいいですか?……近いです」



5 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 16:37:07.50 ID:sEGO+TIk.net


ふと気がつくと、かなり近い場所にいたの。

まるで、キスでもせがむかのような……そんな、至近距離に。

2、3歩後ろに下がります。

海未「最近、ことりの元気がないと、穂乃果が心配していました」

ことり「んー、そうかなぁ?私はいつも通りだよ?」

ほら、といつも通りの笑顔を浮かべるけど、

海未「ほら、やっぱり元気がないじゃないですか」

……?

海未「いつものことりは、もっと元気な笑顔でしたよ」

ことり「……っ。そうかなぁ?」

海未「そうです。何年幼馴染やってると思うんですか?」

穂乃果ちゃんよりもホンの少し短い年数だよ、なんて言葉が出かかって、ぐっとこらえます。

ことり「えへへ、そうだよねぇ。でも、最近はバイトが忙しいくらいで、μ'sの活動もそんなに忙しくないし」

ことり「うん、バイトの疲れが出ちゃったのかな?」

海未「そうですか?それだけならいいんですが」



6 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 16:51:13.69 ID:sEGO+TIk.net


ことり「心配かけちゃったみたいで、ごめんね?」

海未「いえ、謝ることじゃないですよ」

海未「そうだ、穂乃果とも話をしていたんですよ。最近、ことりがいつもに増して綺麗になったと」

ことり「……そう、なのかな」

海未「もしかして、誰か好きな人でもできたのですか?」

ことり「うーん、どうかなぁ?」

褒めないで。

嬉しいけど、切ないの。

海未「私たちが応援など、厚かましいような気もするのですが、穂乃果が聞き出してこいと、うるさくて」

ことり「あはは、ありがとう♪ 誰かを好きになった時、真っ先に相談するね」

海未「この前のライブの衣装、穂乃果がベタ褒めで……」

海未「雪穂から聞いたのですが、穂乃果の体重がまた増えたと……」

海未「昨日の電話なんですが、穂乃果ときたら2時間も喋って……」

海未「先週の土曜は弓道の練習場にも穂乃果が顔出しにきて……」

海未「お母様ときたら、穂乃果の話ばかり聞き出して……」



7 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 17:04:24.06 ID:sEGO+TIk.net


穂乃果、穂乃果、穂乃果。

海未ちゃんとの話題の中心は、常に穂乃果ちゃんがいる。

ねぇ海未ちゃん、知ってる?

それってね、世間一般ではノロケって言うんだよ?

お腹いっぱいだよーって返すのが一般的なのかな。

だけど、私はそんなこともできなくて、ただ相槌を打つだけ。

私は海未ちゃんが好き。大好き。

だけど、どんなに好きでも、知られちゃいけないの。

だって知られたところで、海未ちゃんからの答えなんて、わかりきってるの。

好きで好きで、大好きだけど、でも絶対に求めないの。

求めたって、手に入らないから。

海未ちゃんのことを好きだったことを忘れようとするけど、それができなくて……

会うたびに、やっぱり好きで。

話するたびに、もっと大好きで。

……これじゃ、恋が悲しいよ。



8 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 17:15:01.65 ID:sEGO+TIk.net


空がオレンジ色に染まる頃、海未ちゃんの携帯がメールの着信を知らせた。

差出人なんて、わざわざ聞くまでもないよね。

ことり「……穂乃果ちゃん、なんて?」

海未「今日の宿題でわからないところがあるから教えろと、そんな内容ですよ」

ことり「くすくす。海未ちゃん、穂乃果ちゃんに甘くなったんじゃない?」

海未「……その、恥ずかしいのですが……」

ことり「ん?なになに?」

海未「あの、アレですね……惚れた弱み、と言いますか」

ことり「あはは、ノロケだノロケだー」

海未「もう!からかわないでくださいっ!」

頬が赤くなっているのは、夕日の照り返しだけじゃないよね。

照れながら話す海未ちゃんも可愛いなぁ。

ことり「さて、そろそろいい時間になってきちゃったし……」

海未「そうですね、帰りましょうか」



10 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 17:28:27.24 ID:sEGO+TIk.net


家に着くなり、ベッドにダイブする。

枕に顔をうずめていると、昔のことを思い出しちゃう。

心の奥の気持ち。

同性なのに、海未ちゃんのことが好きだと気がついた瞬間。

私のことを気遣ってくれる、誰よりも優しい笑顔。

ダメなことをダメと叱ってくれる、誰よりも厳しい声。

トランプとかするとすぐに表情に出ちゃう、誰よりも素直な性格。

すらりと伸びた白く長い手足、艶のある黒髪。

なんかもう、海未ちゃんの全部、全部が好き。

あの時、私は生まれ変わったかのように、世界が一変したの。

もうずっと昔のこと。

海未ちゃんは忘れているかもしれないけど。

……子供の頃、野良犬に追いかけられたことがあったの。

泣きながら全力で走っていたら、たまたま通りかかった海未ちゃんが、犬を追い払ってくれて……

助けてもらった後、私は海未ちゃんに抱きつきながら、わんわん泣いちゃった。



11 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 17:42:23.81 ID:sEGO+TIk.net


今思えば、私は足の早い子供じゃなかったの。

だから、野良犬から逃げ切るなんて、とてもできるはずがない。

冷静になって考えれば、あれは野良犬にとってはただの遊びだったんだよね……

海未ちゃんはそんなこと、気付いていたのかもしれない。

追いつかれるはずがない、って。

すぐにでも追い払えるぞ、って。

でも、どんな考えが海未ちゃんにあったとしても、あの時の私には……

漫画のヒーローみたいな?

おとぎ話の王子様みたいな?

ううん。少し違うかな。

やっぱり、いつも通りにカッコいい海未ちゃんだったよ。

きっとあの時から、ずっと海未ちゃんに恋してる。

恋しているから。

だからこそ私たち3人の日常から、私だけが抜け落ちたようで。

海未ちゃんと穂乃果ちゃんの日常を知るたびに、私の恋心が傷ついていくの。



12 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 17:55:05.84 ID:sEGO+TIk.net


翌日、μ'sの練習中。

いつも通り、海未ちゃんの厳しい指導の元、私たちは練習に励んでいます。

海未「ワン、ツー、スリー、フォー!」

海未「ファイブ、シックス、セブン、エイッ!」

海未「真姫、笑顔を忘れましたか!?」

真姫「これが精一杯よ!」

海未「にこは逆に不自然に笑いすぎです!」

にこ「この笑顔のどこが不自然よぉ!?」

海未「穂乃果、動きが大きすぎです!」

穂乃果「うん、がんばるっ!」

海未「Bサビ後からラスサビ手前まで、もう一度おさらいします。その後に全体を通してから、休憩を入れましょう」

海未「さ、もう一息ですよ!」

8人「はいっ!」

海未ちゃんがたまに見せる笑顔が、私の目には眩しく映って。



14 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 18:14:31.50 ID:sEGO+TIk.net


海未「お疲れ様でした、10分の休憩にしましょう」

海未「はい、穂乃果。お疲れ様でした」

穂乃果「あ、私のドリンクだ。ありがとー」

海未「どういたしまして」

海未「ことりも、はい。お疲れ様でした」

私のことを呼ぶその声に、またキュンと胸が締め付けられたり。

海未「……ことり?どうかしましたか?」

ことり「え?ああ、うん!ありがとう、海未ちゃん♪」

いつもの笑顔でドリンクを受け取る。

けど、私は……

私からも、何かをあげたい。

全部をあげたい。

身も心も、思い出も、これからの人生も、何もかも。

でも、なんにもできない……なんにも、しちゃいけない。



16 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 18:28:21.98 ID:sEGO+TIk.net


どんなに好きだったとしても、何も与えちゃいけないの。

与えたところで、受け取ってもらえない。

受け取ってもらえるはずもない。

だって、海未ちゃんはもう、穂乃果ちゃんとお付き合いしているんだもん。

穂乃果「……ことりちゃん、大丈夫?」

ことり「ほぇっ?」

穂乃果「さっきからずっと、なんかぼーっとしてるよ?」

海未「熱中症ということもありえますし、今日はお休みしますか?」

熱中症。

そういえばSNSかなにかで、『熱中症』をゆっくり言うと『ねぇちゅうしよう』に聞こえる、という話を思い出しちゃって……

海未ちゃんからキスしよう言われたと、一瞬だけ勘違いしちゃった。

それだけで、顔が真っ赤になっちゃったのがわかるの。

ことり「……うん、今日はここで見学してようかな」

海未「体調が優れないときは、無茶しないほうがいいです」

穂乃果「それじゃ、帰りは一緒に帰ろうねっ!」



17 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 18:38:33.74 ID:sEGO+TIk.net


日陰でしゃがみながら、さっきの言葉が頭の中でリフレインする。

海未『熱中症ということもありえますし……』

海未『ねぇちゅうしよう……』

こんな風に思い出すだけでも、また顔が熱くなる。

好きで好きで、海未ちゃんのことが大好きで!

思うだけで頬が緩んじゃう。

それでも、なんにも変わらないの。

なんにも変われないの。

ことり「……はぁぁぁ…………」

トキメキと切なさがまぜこぜになって、胸のあたりにつっかえる。

こんなんじゃ、息ができないよ……

……これじゃ、恋が悲しいよ。



18 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 18:58:07.85 ID:sEGO+TIk.net


穂乃果「こっとりちゃーん!帰ろー!!」

ことり「うん、帰ろっか!」

海未「ことり、大丈夫でしたか?」

ことり「えへへ、心配かけちゃったかな、ごめんね?もう大丈夫だよ!」

大丈夫なわけないよ。

そんな優しい目と、慈愛の声をかけられたら、また好きになっちゃいそう。

平気そうな顔とか、平気そうな声の作り方が、板についてきちゃった。

その内、本当に平気になるのかな。

でも平気になった時って、この気持ちを忘れちゃった時なのかな……?

いやだ、絶対にイヤだ!

忘れたくない、なかったことにしたくない!

身を焦がすような思いを持つなんて、きっと人生で何回もない。

だから私は、この気持ちを詩にすることにしたの。

μ'sじゃなくていい、「南ことり」という名前じゃなくてもいい。

海未ちゃんに届かなくたって……よく、ないんだけど。

けど、いいの!



19 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 18:58:44.44 ID:sEGO+TIk.net


この思いがなくならないように、忘れないように!

いつか、歌いたい。

そうだなぁ、曲名は……一方通行?片思い?あこがれ?

なんか、うーん。

片道切符……あ。

ONE WAY。

うん、しっくり来ました。

衣装は可愛い系よりも、ちょっとダメージ加工したワンピースとかかな?

片方のヒールが折れたハイヒールと、裾がボロボロのワンピース。

……うん。いかにも、失恋した女の子って感じ。

あはは。こんなこと、誰にも話せないよね。

いつかどこかでこの気持ちを歌えたら。

きっと、その時に初めて吹っ切れるような、そんな気がします。




ことり「ONE WAY」おわり



20 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2015/05/24(日) 19:01:06.70 ID:sEGO+TIk.net


題材は内田彩1stアルバム「アップルミント」より、『ONE WAY』
日本コロムビアより絶賛発売中!
アマゾンでも売ってるよ!
アルバム表題になっている『アップルミント』は視聴もできるよ!


なお、2015年7月22日には2ndアルバム「Blooming!」が発売予定!
みんなよろしくねっ!



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衝撃のラスト
[ 2015/05/30 07:11 ] [ 編集 ]

このラストは反則だわ

販促だけに
[ 2015/05/30 07:17 ] [ 編集 ]

あぁ、最後のがやりたかっただけか
[ 2015/05/30 07:47 ] [ 編集 ]

通販番組でこういうのあるよね
別番組かと思うほどストーリー長いの
[ 2015/05/30 10:56 ] [ 編集 ]

衝撃のラストで笑ってしまったわ
[ 2015/05/30 12:09 ] [ 編集 ]

タイトルの時点で察したわ
[ 2015/05/30 12:45 ] [ 編集 ]

シリアスなやつかな❓
と思って真面目に読んでたら最後ww
笑いすぎてお腹痛いww
[ 2015/05/30 13:05 ] [ 編集 ]

アップルミントはうっちーファン、ことりファンじゃなくても名曲揃いの名盤なので是非聞いてほしい
[ 2015/05/30 18:04 ] [ 編集 ]

最近のダイレクトマーケティングなSSほんとすこ
[ 2015/05/30 19:33 ] [ 編集 ]

ほのうみ厨ではあるけど、こういう話は切ないなぁ…(オチは置いておいて)
[ 2015/05/30 23:29 ] [ 編集 ]

スピカテリブルじゃあかんのか?
[ 2015/05/31 00:18 ] [ 編集 ]

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[ 2015/05/31 00:37 ] [ 編集 ]

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[ 2015/05/31 05:00 ] [ 編集 ]

うっちーはラブライブの仕事してないときまでことりを重ねられたくないと公言してるんだよなぁ…
[ 2015/05/31 09:46 ] [ 編集 ]

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[ 2015/07/12 06:42 ] [ 編集 ]

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