1 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 21:53:31.35 ID:47bkPbri0
百合
神奈×悠
『キス、とかそれ以上がしたい?』
『したい』
――「キス以上」って、いつしていいの?
今思うと、私はなんちゅーとんでもないことを言ってしまったのか。
それ以上って、それ以上って、それ以上ってなによ。
そして、こいつはなんで躊躇もなく即答したのか。
「神奈、また変な顔してる」
「へ?」
「そこの問題、そんなに難しい?」
悠は抱きしめていたクッションを脇に置いて、
机の反対側から身を乗り出した。
「あ、ううん……ちょっと、別のこと考えてたの……」
「なに?」
「あんたには関係な……いこともないし、むしろあり得るようなそんな感じよ」
「どういうこと」
「や、ごめん、今のは自分でも意味不明だったわ……」
2 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:02:20.53 ID:47bkPbri0
悠は首を小さく傾げた。
「神奈はいいな。たくさん、面白い顔をするから」
「だから、それ褒めてないことに気付いてる?」
「そうなの? 私は、見ていて楽しい気分になるよ」
悠は微笑んだ。
良い顔で笑いおって。
「で、何を考えていたの?」
「引っ張らなくてもいいわよ!」
「気になる」
彼女は四つん這いでこちらに移動して、
私の脇に手を差し入れた。
「え、ちょ」
そして思い切りくすぐられた。
「ッ……ゆッ……ひひひッ!?」
人に聞かせられない雄たけびが部屋に轟いた。 3 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:09:47.06 ID:47bkPbri0
「権力には……屈しないわ……決して」
数分後、互いに力尽き、肩で息をしながらベッドに横たわっていた。
「もおー……テスト勉強……はあッ……なんないじゃない、ばかーッ……はあ」
「途中から、抵抗する神奈が可愛くて……止められなかった」
「はあッ!?」
飛び起きて、毛を逆立てた猫みたいに悠を威嚇する。
「どうどう」
両手で牽制された。
「シャラップ! あんたは万年発情期のどっかの生徒会長か!」
「?」
「不思議そうな顔をするな! あんたのことだよ!」 4 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:14:44.58 ID:47bkPbri0
「落ち着いて、神奈」
笑いながら、私の袖を掴む。
落ち着いてるわ!
と言い返そうと思ったが、
ここでまた喧嘩みたいになるのも嫌だったので、
私は一度深呼吸した。
「……ふー」
「……ねえ、キスしたい」
ぎょっとした。
「また、随分と突然ね!?」
「ムラってした」
「どこで?!」
「唇見てたら」
私は急いで、両手で口元を覆った。 5 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:21:44.93 ID:47bkPbri0
先ほど思い出していたことが、また頭を過った。
そんな不埒な私をよそに、彼女は私の腕を引っ張った。
かろうじて、肘をベッドにつけて、悠に体重を全て預けることは避けれた。
ぷるぷるしながら、軽くキスをした。
「……ッ」
互いに見つめ合う。
あー! 慣れない!
いつまで経っても慣れやしないわ!
「もう、お互いの家に行ったよ?」
「そうね?」
何か言い始めた。
彼女は、いつも唐突だ。
「手も握ったし、旅行にも行ったし、お風呂も一緒に入ったし」
この流れは、まさか。
「胸も見ちゃった」
「そ、そりゃお風呂に行けば誰だって見るわよッ」
「神奈、こっち見て」
頬が熱くなるのが分かった。
ベッドシーツを濡らしてしまうくらいに、
手は汗ばんでいた。 6 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:30:27.15 ID:47bkPbri0
不埒はこいつの方だ。
必死に肘で悠の体から離れようとしたが、
彼女の腕が背中に回されていた。
黒いシャツから覗く、悠のうなじが眩しい。
こんなことを考えてしまっている自分に、自己嫌悪。
私は欲望には屈しない。
とか、そんな決意表明を心の中でしていたら、
いつの間にか、悠の指が私の耳に触れていた。
「ッぁ……」
びくりとして、力が抜ける。
すとんと悠の胸の上に体を預ける形になってしまった。
「ご、ごめ……」
恥ずかしい。
悠の顔が近すぎるし、
変な声出たし、
てか、耳が弱いって、
こいつ分かっててやったわね。
許すまじ。
「ゆ、悠、あんたッ……んむぅ……ッぁ」
今日二度目の不意打ち。
このたらしが! 7 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:35:10.26 ID:47bkPbri0
唇を離すと、吐息が鼻をくすぐった。
熱くてしょうがない。
どこもかしこも。
特に、顔。
特に、耳。
「もう、キス以上してもいい?」
「!?」
予想してはいたけれど、
衝撃が大きすぎて固まってしまった。
この台詞を聞くのは二度目だって言うのに。
いや、よく考えよう。
ううん、よく考えなくても、二度って言うのは大した回数じゃない。
うん。
そうだわ。
早すぎだわ。
早計だわ。
「ちょい、待ち。ま、まだよ」
「あと、何をすればいいの?」
「何? 何って……」
んなもん考えてないわよ。 8 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:39:46.15 ID:47bkPbri0
「それとも、やっぱり私とはできない?」
「へ?」
あ、ガチな顔し始めた。
「……私、神奈が無理なら」
諦める、とでも言いたげだ。
しかし、悠にそんなことが言えるわけがないことは知っている。
「あき……ら……」
唇が震え出した。
え、泣く?
泣いちゃうの?
待て待て。
「あ、あんた、これくらいで」
「やっぱり、ダメ。神奈は誰にも渡せない。だから、諦めない」
とか何とか開き直って、今度は頬っぺたにキスされた。 9 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:46:57.96 ID:47bkPbri0
「神奈、神奈の胸も、お尻も、太ももも……全部私のにしていい?」
あろうことか、その台詞を、
指で体に触れながら告げてきた。
その度、変に敏感に反応してしまった。
恥ずかしい。
「やッ……このスケベ」
「神奈が、してもいいって言った」
言ったっけ?
言ったか?
いや、直接的表現は避けたよ、私は。
「ね、胸、触っていい?」
「ひいい!?」
言葉にされ、私は悲鳴を上げた。
どうしてこうも心臓が体から脱出する勢いで暴れるのか。
誰か教えて。 11 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 22:54:03.90 ID:47bkPbri0
「神奈、人気者だから……早く、私のものだって証拠が欲しい」
「証拠なんて……」
いらないじゃない。
「いる」
真面目な顔で、
彼女は言った。
なによ。
まだ、不安なわけ。
こんなに一緒にいるのに。
なんだか、それって、悲しいことね。
縋るような悠は、
あの交流会の前日から、
誓いのキスをしたあの日から、
何か変わったというわけではなく、
ただ、一歩前に踏み出したと言うだけで、
誰かと比較して、自分を保ち、
誰かの一番でありたいという、
そんなしがらみから放たれてはいないんだろう。
どうすりゃいいのかって。
わかってる。
私が素直になればいいだけの話。
単純な話。
14 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:04:08.62 ID:47bkPbri0
いや、しかし、なんで胸を触るのが証拠になるのか。
その条件を小一時間問いかけて、証明してやりたいわ、バカやろう。
あー、時間よ止まれ。
この部屋だけでええから。
「神奈?」
「……それだけ?」
「え?」
「とりあえず、それしたら、あんたは安心する?」
「うん」
満面の笑み。
変態め! 15 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:14:47.82 ID:47bkPbri0
「悠、あの……脱いだ方がいいの?」
「脱ぐの? なんで?」
「え、だって」
「寒いでしょ?」
「そりゃ、まあ」
「だから、いいよ」
え、でも、私、めっちゃ着込んでるけど。
シャツの下に、二枚着てるし、
カーディガン着て、ブレザー着てるし、
え、いいの。
ほんとに。
悠が、私をベッドに押し倒した。
先ほどと逆の立ち位置。
人を見下ろすと、加虐心が増すって本当かな。
悠はどうなのかしら。
「神奈、神奈」
「なによ……」
「呼んでみただけ」
「?!」
なにいちゃつかせるのよ。
私らは、どこぞのバカップルか。
この光景、ちゃらんぽらんズには見せられないわね。 16 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:22:52.47 ID:47bkPbri0
でも、嬉しいのよ。
分かってる。
言わないけど。
こうやって、私にだけ甘えてくれる彼女がいいなって、思ってる。
「悠」
「ん?」
「……」
呼んでみただけって、案外恥ずかしい台詞ね。
私はもにょもにょしながら、言った。
「ふふ」
鼻で笑われた。
悔しい。
二人の時は、たまに余裕を醸し出してくるから腹立つ。
テストで私が二位になった時くらい腹立つ。
私よりちょっと背の高い所とか、
口下手なくせに、たまに強引な所とか、
私が、こいつのこと好きなんだってこととか、腹立つ。
なのに、何でもしてあげたくなる。
あ、何でもはやっぱりナシ。
調子に乗ったら何されるか分かったもんじゃないし。
17 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:30:26.80 ID:47bkPbri0
て、これじゃあ本当に誘い受けじゃない。
あー、これ、なに。
悠のせい。
うん、こいつが悪い。
悠がまた笑っていた。
どうせ、私の顔が可笑しいとか言うんだろう。
あ、やっぱり。
ほーらね。
彼女は私に胸に耳を乗せた。
「早いね」
「そりゃ」
そうだろう。
赤ん坊みたいに、
悠はすり寄った。
しだいに態勢を変えて、
とうとう、頬から首筋、
んで、胸に手を這わせて、
ブレザーの下に右手を突っ込んだ。
その間も、ずっと私の顔を見ていて、
あ、こいつ私の恥ずかしがる所を楽しんでいやがるのだと、
気が付くのに時間はかからなかった。 18 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:39:43.34 ID:47bkPbri0
とは言っても、すでに動き出した右手を止めることなど、
私には到底無理だった。
こんなに何重にもプロテクターをしているのに、
悠の手が触れた部分がカーディガン越しでも分かってしまう。
たまったもんじゃない。
好き勝手に、彼女は、揉んでいた。
部屋には二人だけ。
ここは、悠の部屋。
家族はみんな外出中。
まさに、ここは蜘蛛の巣。
私は、さしずめミノムシか何かか。
「ッ……ぁ、ゆう」
声が出て、自然名前を呼んでしまう。
「……ん?」
全て受け止めてくれるような眼差し。
むかつくわね。
「柔らかいよ、神奈」
わー!
人の胸の感想を、
どうしてこうも平然と言ってのけるか、こやつは。 19 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:49:58.89 ID:47bkPbri0
「あんたのとッ……そう変わらないと思うけど」
「違うよ。神奈の方が、えろいよ」
「ば、ば、ば」
ばかやろうと、罵倒してやろうと思ったのに、
悠がシャツのボタンを外し始めたので、
私はサボテンみたいになった。
「さ、さっき脱がなくていいいいいって」
噛んだ。
「うん。全部脱ぐ必要ないから。それに、私が脱がせたかった」
もう、どうにでも。
でも、ちょっと怖いのよ。
分かってる?
乙女心ってやつ。
好きな人に、自信を持って全部をさらけ出せるわけじゃ、ないんだから。
「……や」
「や?」
「優しくして………よね?」
「……うん」
耳たぶを軽く噛まれた。 20 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/16(水) 23:55:26.13 ID:47bkPbri0
で、そんなことをされたら、
自分の体がどうなるか、
なんとなく予想はできていた。
シャツのボタンを外し、下に来ていた薄手のキャミソールとブラを、
いともたやすくかいくぐり、悠の指が胸の真ん中に直に触れた。
声はに出さずに、中国人みたいな台詞を胸中で吐いた。
アイヤー。
「固くなってる」
と、言われて、
もう死にたくなった。
歯を食いしばって、
羞恥に耐える。
「ね、神奈」
分かってる。
あんた、絶対楽しんでるでしょ!
21 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/17(木) 00:02:04.27 ID:NWrt+bSE0
「今、必死?」
私は声もなく、ただ頷いた。
悠の手のひらが、私の小振りな胸を揉みしだく。
なに、この拷問。
女の子に揉まれるって、
こんなに恥ずかしいものだったのね。
なんだか、しっとりしてきたし。
興奮してるの、悠?
「神奈」
突起を転がしてくる。
「ッひ」
もう、おうちに帰りたい。
唇をぺろりと舐められた。
今度は、自分の親指を舐めて、
それを私の唇に押し当て、
その指でまた胸をいじり始めた。
ぬるっとして、感じないように意識していたのに、
「ッ……ゆう、やめ」
なにそれ。
なんてエロゲ。 22 :
◆/BueNLs5lw 2015/12/17(木) 00:11:22.13 ID:NWrt+bSE0
そんな非人道的な仕打ちが、10分くらい続いた。
「もう、満足したッ……はあッ……ッ?」
最後の方は、やたら上手く触ってきよってからに。
びっくりだよ。
神奈さんは、もう、限界だよ。
「うん」
「そ」
はあ、疲れた。
私は自分の姿態を見下ろした。
なんて、ハレンチな格好かしら。
胸がやたらじんじんするし。
「神奈、次はね……」
あ、その続きは言わせないわよ!
私は、彼女の唇に自分のを重ねたのだった。
悠と会ってから、暫く経って、
彼女の譲れないものはなんだろうと、
ふと、疑問に思ったことがある。
今、あんたは見つけたのかしら。
ねえ、悠。
おわり
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総合タワーリシチがくるとは予想外
だが俺得過ぎる
原作に忠実なssでよかった
これをアニメ化まで持っていけなかったつぼみ編集は無能
続きをssという形で読めたことに感謝したい
ありがとうございます
まとめからきたけど「うぉぉおお?!」ってなった
良い作品だったな〜
作者さん今は普通のラブコメ描いててかなC(百合描写あったけど彼氏前提だし)
ヤマノススメみたいに15分アニメで2クールじっくりやって欲しいね
タワーリシチのSSとか初めて見た
つぼみ廃刊で打ち切りみたいに終わってしまったのが悔やまれる作品
タワーリシチ1話読んだ時にドストライクだった。
続き読みたひ…
タワーリシチ面白かったんだけどな
キャラ出しすぎて色々と薄くなって残念だわ
編集が本当に無能だわ
今年これ集めるのすごい苦労した。
神奈ちゃん系主人公大好きだわ。
リシチいい…
作者やる気ありそうだし、何かの機会で復活しないかな…
タワーリシチほんとすこ
此花亭奇譚を復活させてくれたバーズあたりが拾ってくれたらいいのにね
リシチに限らずつぼみは惜しい作品が多かった
神奈ちゃんモノローグでもうるせえ
リシチは電子書籍で集めたな。軽い感じが大好きだった。
あと同時期に、ストシェとか、ガールフレンドとか、あのキスとか小百合さんとか、しまいずむとか、黒縁眼鏡とかプアプアとかひまわりさんとか…......
やっぱり重すぎないのが好き。
重すぎると、打ち切られたときの消化不良が半端ないし。
タワーリシチのSSがあるとは思わなかったわ
いい作品だったなぁ
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